番外編:ルル学校ゼミプロジェクト「カブワケ・モバイル1~3号」

 

 あいちトリエンナーレ2016の参加アーティスト集団「ルアンルパ」が展開するプロジェクト《ルル学校》のゼミクラスで、公共空間に関連するプロジェクト「カブワケ・モバイル1~3号(by mocahana)」が始動します!このプロジェクトでは、モバイル型のカートを製作し、錦二丁目内にあるベンチやデッキを中心に、お茶会や株分けなど様々なプログラムを実施するものです。これから10月22日~23日にかけて錦二丁目で開催されるゑびす祭りまで、様々なプログラムを生み出していくプロジェクトですので、ぜひ注目し、参加してみてください。

 

 

《ルル学校》とは?

 

インドネシアのアーティスト集団「ルアンルパ(ruanrupa)」は2000年の設立より、「文化と都市」というコンテクストの中、アートがどのように関わっているかを提案してきました。それを展覧会、フェスティバル、アートラボ、講習会、調査、出版、オンラインジャーナルなどの形で実践しています。「ルル学校」はあいちトリエンナーレ2016の会期中に一般からメンバーを募り、知識・経験をシェアすることにより、名古屋に新たな「カルチャー・エージェント」を育てる「ルアンルパ」のプロジェクトです。地域のコンテクストに基づく実践/アイデア/空間に対する新たなアプローチの模索を目指しているものです。

(あいちトリエンナーレ2016公式ホームページより抜粋)

 

 

 

大地は誰のもの?

 

座りたい、食べたい、寝たい、祈りたい。

都市の広大な面積に対して、わたしたちが自由に思ったことを出来る場所はどのぐらいあるのでしょうか?

 

わたしたちの住む町では公共施設や公共空間(公園・道路など)を除くと、私有地の多くは入ってはいけない場所か、お金を対価としてサービスを受けるための場所であるか、自分が所有している土地であるか。

例えば錦二丁目では、公共の土地は全体の40%近くを占めていますが、そのほとんどは道路、それも車道の割合が大きく、誰もがみだりに入れる「資格がある」場所は歩道に限られます。地区に点在するコインパーキングを合わせると自動車のための土地は沢山あるのに対し、人々のための土地は10%くらいしかなく、またそこでの行為は、道路交通法で厳しく制限されているのが実情です。

 

都市の営みは、効率的かつ公平・安全に、わたしたちの生活に欠かせない様々かつ高度なサービスを提供しています。しかしそのために、これまで大地に様々な線引きやルールを決めていく必要があります。ふと気づくと、わたしたちは食べる場所も、寝る場所も、座ってぼんやりと思いにふける場所も、あまりないのかもしれません。

 

 

 

 

都市の裂け目(Urban Crack)

 

そんな中でも、まちを見渡してみると、ほんのかすかに大地がむきだしになっている、都市の裂け目(Urban Crack)を見つけることができます。公と私のほんの3cmの間に咲くすみれとそれを増やす人、植樹帯でそだつ大根とそれを植える人。まちを覆うルールや境界からわずかに見える裂け目から、都市が成立する前の大地が持つ多様なふるまいの手がかりがあります。

あいちトリエンナーレ2016連携事業として錦二丁目地区に設置された木質化ベンチも、公共空間での多様なふるまいを促す手がかりの1つです。しかし、ベンチを前に私たちはどうふるまえばいいのか、その手がかりをうまく生かすことができていないように思います。

 

 

 

都市の裂け目を走るカブワケ・モバイル(Kabuwake Mobile)

 

「カブワケ・モバイル1~3号」は調査・製作・運営・記録で構成される、都市の裂け目を見つけ、広げ、分け合うためのプロジェクトです。公共空間で様々なアクティビティを生み出すモバイルを製作し、まちの至るところでカブワケを展開し、都市の裂け目を広げるカブ(株・機会・発見)をばらまきます。

 

製作するカートは1号から3号までの3台で構成されます。1号は公共空間を使いこなす様々なグッズが載せられています。2号と3号は、地域で見つけた様々なみどりが載せられ、株分けされるのを待っています。このカートを期間中に試験的に木質化ベンチをはじめとした地域内の様々な場所で運行し、そのふるまいを記録し、都市の公共空間とその使いこなしを考えます。

 

 

モバイルの公開制作とカブワケ・ワークショップ(2016年10月9日)

 

 

 10月9日に、ルル学校内でカブワケ・モバイルの公開制作と、カブワケ・ワークショップを開催しました。午前に開催したカブワケ・ワークショップでは、地区でとれた株をルル学校に立ち寄った方に分け合ったり、株分けを教えたり、教えられたり。

 午後の公開制作では、メンバーが中心となったカートの公開制作、参加者が気軽に話せるお茶の間づくり、地区内で手に入れた布を使った公共空間使いこなしのためのグッズ(ガーランド、コースター、クッションなど)の参加型制作を行いました。お子さまたちにはガーランドが人気!

 夕方にはカートが完成し、まちに繰り出す試運転を行いました。今後2週間をかけて、ベンチを中心に不定期で街の中を運行します。

(c)megumi nabata 

 

 

カブワケ・モバイル、まちへ!(2016年10月13日~20日)

 

 

 制作したモバイルを使って、地区内の公共空間ベンチを拠点とした運行を行いました。

 

 10月13日のお昼にはメンバーを中心として、ランチミーティングを。近くの会社に勤める人たちがランチに急ぎ混む時間のため、飲食店が集まる地区では邪魔になることも。。。交差点近くのベンチは、幅員の余裕もあることから、暑い日でしたが、パラソルがあることで日差しも遮ることができ、快適なランチタイムを過ごせました。

 10月14日と18日はともに夕方以降にまちを巡回しました。カートに乗せたクッション、コーヒー、自家製サングリア、そしておやつがあれば、リビングのように過ごすことができます。ベンチ前のゴルフショップのお客さんとの新しい出会いや、道行くまちの人との会話、自然に?人が集まり囲みやすくなるきっかけになりそう。

 

 大工道具をのせればまちがベンチを管理するためのカートに、カブは地域の植栽を分け合うきっかけに、囲碁や将棋を載せればむかしの縁側の風景のように。まだまだアイデアはたくさんあり、プロジェクト終了後も断続的に様々な公共空間の過ごし方を模索する予定です。

 

 ちなみに10月20日も17時半から運行予定です。

 いま決まっているスケジュールでは最後の機会になりますので、ぜひのぞいてみてください。

 

(c)megumi nabata 

 

 

コンセプトブック(zine)および卒業式(10月23日)

 

 

 製作から運行までの様子はzineとしてまとめるとともに、10月23日の卒業式で最終プレゼンテーションを行いました。当日はあいちトリエンナーレ2016最終週の週末ということもあり、たくさんの方にお越しいただきました。ありがとうございました。

 当日の様子は後ほどホームページにアップいたします。

 

 なお、ルル学校閉校後も活動は継続して行う予定です。

 また詳細が明らかとなりましたら、ご報告いたします。

 

 

 

(参考)木材循環・生物資源循環

 

「カブワケ・モバイル1~3号」の製作に使用する木材は、豊田森林組合から調達し、大学での実験や他地域での外交などに使用されたものの三次利用です。これにより、都市内で木材循環を達成することに貢献しています。

また、株分けを行う植物の一部は、チョウやミツバチなどの蜜源となるものです。

錦二丁目地区では、ビルの屋上を活用した養蜂が行われており、地域内のいくつかのレストランやお店で口にすることができます。株分けによりみどりが増え、それにより地域における蜜源や生息地が充実し、やがて私たちの口に戻る。生物資源の循環とネットワーク化もまた、本プロジェクトの意義の1つです。